MY EXPLORATION vol.04 平賀さち枝

まっしろな気持ちで会いに行くだけ

パラディウムがテーマにする"CITY EXPLORATION"(都市探検)インタビュー第四回目は、6年ぶりとなるフルアルバム『まっしろな気持ちで会いに行くだけ』を今秋リリースしたシンガーソングライターの平賀さち枝さん。

どこか爽やかさのある曲を

平賀さち枝さんは2011年、ファーストアルバム『さっちゃん』をリリース。ミニアルバムやシングルを含め、その後、年1枚のペースで3作を発表したが、今年9月にリリースした『まっしろな気持ちで会いに行くだけ』は、個人としては6年ぶりのフルアルバムとなる。今回、千駄ヶ谷周辺を歩きながら、これまで、そしてこれからのことについて話を聞いた。

平賀さんの楽曲は、生活の中のふとした情景や季節、街々の景色を思い浮かべさせてくれる魅力があり、出会った時期や時代には関係なく、聴き込める普遍さがある。上京し、楽曲制作を始めた頃から、現在も変わらず外へ出て、街を歩いた心象を蓄積しているという。

「とにかく、街を歩くのが好きなんです。都心でも下町でも、色々な場所を歩きます。何かに意識を傾けることなく、街々の雰囲気を感じながら歩いています。その中で、ふと気になった景色を記憶の貯蔵庫にしまうんです。写真のようで違うもの、感じた景色を情景としてつかむ感覚でしょうか」

「楽曲を作る際には、そうした情景を言葉へ起こしていますが、パッと思い出して掘り起こしていくこともありますし、何年もたってから取り出すこともあります。無理に作り出そうとは思わず、とにかく自然を心がけています。気になったら行うことなので、そのときの状況にも左右されて、"悲しい"や"嬉しい"など、歌詞に紡がれる感情は様々です。それでも歌で届けるときは、どこか爽やかにしたいという気持ちがあるので、掘り出すときには言葉を選んでいく。これは歌を作り始めた頃から変わらないですね」

やめなかった歌うこと

こうした曲作りに対する感覚に変化はなかったが、年1枚のペースで続けた作品発表や、数多くのライブ出演で安定して成長しているように見えた活動は、当たり前のものになり、ルーティンへと変化してしまっていたと話す。

「デビューから着実に進んでいく中で、歌うことや作品を出すことが当たり前になっていて、沢山のことに気付かない期間になっていきました。まわりの言葉は聞こえなくなり、優しさも素直に受け入れられない時もあって。とにかく、子どものままだったように思います」

 

それでも、『まっしろな気持ちで会いに行くだけ』の発表までの3年半も、歌うことはやめなかった。「今作のリリースまでの期間は活動のペースをスローダウンさせて、音楽活動を中心と考えずに一定の距離をもって、友達と遊んだり、運動をしてみたり、ご飯づくりにこってみたり。そんなふうに普通の女の子としての日常を淡々と送っていましたが、この期間に出会った人たちとの交流が、心の支えになりましたね。だから、好きな歌はやめなかったです」

「リリースの間隔が空いてしまうと、どうしても大きなイベントとは距離ができますが、地方や色々なフェスからも声をかけていただけて、ライブ活動ができました。そのライブに足を運んでくれる人、声をかけてくれる人たち。友人やミュージシャン仲間からも、『リリースはいつなの?』と声をかけていただいて、私を気にかけて、待ってくれている人がいることを知って、とても嬉しかったです」

まっしろな気持ちで会いに行くだけ

アルバム制作を決めて動き出したのは、昨年末のこと。音楽仲間や同世代のミュージシャンの姿にも触発されたという。「自らの幼さや、自分の思い描く自分とのギャップに葛藤をしていた時期もありましたが、迷いながらも進むことを決めました。私だから歌えること、私だから届けられるものがある。気にかけて待ってくれている人やこれから出会う人へと、自分の歌をしっかりと届けたいと思い、アルバムを作ろうと決めました」

「今回のアルバムには、記憶の貯蔵庫にたまっていた曲もありましたが、新しく作った曲もあります。夏の曲が少ないな、と思って『夏の朝にはアセロラジュースを』を作って、秋の曲もないなと、『10月のひと』も作りました。リリースを決めた時期には意識していなかったんですけど、どんな季節でも聴いてもらえたらいいなと思うようになって、『まっしろな気持ちで会いに行くだけ』は、1年を感じてもらえるアルバムになりました」

「私生活と音楽は切り離せないもので、3年半を思い返すと、ふたつとも試練や忍耐。そんな言葉が浮かびますが、この時間がなければ、私自身やまわりのこと、色々と見えないままだったと思います。歌はひとりで歌いますが、そこには聴いてくれる人はもちろん、イベントへと声をかけてくれた人やスタッフの方。まわりから沢山の支えがあるから歌えるということへ気付き、身に染みて、歌うことへ感謝が溢れました。まわりの人から比べたら小さなことかもしれませんが、私には学びの多い時間でした」

平賀さち枝の音楽を届けに

リリースを期に北海道から九州までツアーでまわり、新たな気付きがあったという。「ツアーに出るまでは正直、不安な気持ちがありましたが、集まってくださったお客さんを、しっかりと自分の目で見て、確かめることができました。これまで待ってくれて応援してくれていた人や、初めてライブを見てくれた人。私が歌うことで、喜んでくれる人がいることを実感できました。札幌と福岡は4年振りでしたが、しばらく行けなかった地域へも、もっと自分で足を運んで、しっかりと歌を届けたいな、と思いました。とても大切なことですよね」

平賀さち枝としてのリリースがなかった3年半を経て、『まっしろな気持ちで会いに行くだけ』以降の3年半について聞くと、少し間を置いて、こう答えてくれた。「リリースを決める前までは、『歌うことが仕事』だという意識が薄かったのかもしれません。CDを買ってくれる人、ライブのチケットを買ってくれる人がいて、私は音楽を仕事にできているんですよね。このことを意識するようになって、ひとつひとつのリリースやライブ、音楽活動をより大切していきたいと思えたんです」

「4年前に気付いていたら、また違う場所にいたかもしれませんが、それだと中身は、まだ子どものままだったと思います。良いものはそのまま。いけないなって感じたところは改善して。これからの3年半、それよりも、もっと長く応援してくれている人、待ってくれていた人、これから出会う人たちへ、ミュージシャンとして、平賀さち枝の音楽をしっかりと届けていきたいです」

MODEL


足元は黒が好きなんです。靴もすっきりと見えるので日頃からローカットを選ぶことが多いですね。今日は靴が黒なので、服は白で統一したコーディネートです。

PAMPA LOW LP BLACK
PRICE:¥6,264(tax incl.)

PROFILE


岩手県出身。 最初はギターが弾けずアカペラでライブ活動を開始。数ヶ月後にギターを弾きながら歌うようになる。
2011年kitiからファーストフルアルバム『さっちゃん』発表。 2012年ファーストミニアルバム『23歳』発表。 2013年ファースト両A面シングル『ギフト / いつもふたりで』発表。 2014年にHomecomingsとのコラボシングル『白い光の朝に』を発表。
2017年9月20日に12曲入りのセカンドフルアルバム『まっしろな気持ちで会いに行くだけ』を発表。 2018年1月24日"平賀さち枝とホームカミングス"名義で新作「カントリーロード/ヴィレッジ・ファーマシー」を発表予定。
楽曲提供、こども向け楽曲製作、文章、声優など様々な活動を含め、一年を通して全国的に弾き語り活動中。

OFFICIAL INSTAGRAM TWITTER

INFORMATION


■RELEASE
TITLE:「まっしろな気持ちで会いに行くだけ」
ARTIST:平賀さち枝
DATE:2017/09/20
MORE INFO

■EVENT
「まっしろな気持ちで会いに行くワンマンツアー」
名古屋編
DAY:2018.01.27(SAT)
OPEN / START:19:00 / 19:30
PLACE:鶴舞K.D Japon
TICKET INFO:jellyfish

 
「まっしろな気持ちで会いに行くワンマンツアー」
兵庫編
DAY:2018.01.28(SUN)
OPEN / START:19:00 / 19:30
PLACE:旧グッゲンハイム邸
TICKET INFO:mail
*件名「1/28 平賀さち枝」として、
お名前・ご連絡先・枚数を記載し、メールして下さい。

PHOTOGRAPH by Kenya Chiba

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