MY EXPLORATION vol.02 桐村琢也

境界を越えて人が集うゲストハウス

海外からも多くの支持を得ているゲストハウス “Backpackers' Japan”(バックパッカーズジャパン。以下、BJ)の創業メンバーの桐村琢也さんを迎え、"CITY EXPLORATION"(都市探検)をテーマにインタビューを実施しました。

国際色豊かな場所で活躍したい

国内ゲストハウス・ムーブメントの一翼を担い、業界を牽引するBJ。2010年に1号店をオープンし、現在は東京と京都で4店舗を運営。月に数千人というゲストが訪れるBJは、24才の若者4名でスタートした。

創業メンバーのひとりである桐村さんは、高校時代、短期留学で初めて訪れたニュージーランドで、国際志向を強くした。「ホームステイ先には、現地の高校に通う16才の中国人がいました。ある時彼らに『なんで、その年で親元を離れてニュージーランドで高校に通っているのか』と尋ねたんです。すると、『将来、国際社会で活躍したいからここきに来て勉強をしているんだ』とはっきり答えたことに対して、衝撃を受けたんですよね。16才で親元を離れて、目標を定めて海外の学校へ通う彼らから、大分で小さくまとまっていた自分を見つめ直すきっかけをもらいました」

大学では、国際色豊かな場所で活躍したいという想いを実現させるため、シドニーの大学で交換留学生として学ぶことを選択した。「ワーキングホリデーや大学を休学しての留学は、親にも金銭的な負担をかけるし、自分への負荷も交換留学に比べて少ない。学生の本分は勉強ですし、競争率は高くなるけど、試験を受けて交換留学生として海外の大学を目指しました」と振り返る。

ただ、選んだ環境は優しいものではなかった。「まわりはネイティブでアジア人は自分ひとり。教授から質問をされても何の話をしているのかも理解できない。答えられないとしばらくは相手にもしてもらえない。英語が話せないからグループのプレゼンでは声もかからないし、自分から声をかければ、『お前と一緒だと成績が下がるから嫌だ』って、当たり前のように言われる。とにかく喰らいつくしかない環境。自分から答えられるようになるまで、プライベートな時間はなかったですね」

古民家を改装したゲストハウス

“出会いを通じて新しい価値観に触れるきっかけをつくりたい。旅を広めたい”という概念に共感したのがBJ創業メンバーの4人だった。「その思いを形にするために、色々な手段が考えられましたが、『多種多様な人が訪れることのできる場所をつくれば、その思いは自然と形になるのでは』と、ゲストハウスをやることに決めたんです」

2009年、ゲストハウス開業準備の資金集めに奔走を始めた。「2チームに別れて行動をスタートさせ、2人は国内の市場調査と物件探し、自分を含めた2人と友人1人を加えて3人で世界のゲストハウスを調査するためにアジアからヨーロッパ、中米から南米、オーストラリアと20カ国ほどまわりました。宿泊したゲストハウスでは写真を撮らせてもらったり、スタッフと話したりして、情報を得ていましたね」

帰国後は早々に1号店となるtoco.の開業準備に取り掛かった。「世界1周中に書いていたブログの反響があり、『世界1周から帰国後、東京の古民家で24才のメンバーがゲストハウスをはじめます』と告知していたことも手伝って、オープンは順調でした」

しかし、開業から約半年で東日本大震災により客足が遠のいたことも。「お客さんが来ない日は、スタッフふたりで過ごしたこともありましたが、開業前から沢山のひとに支えられていたことや、日本での認知度もありました。そのお陰で、海外のお客さんが戻ってくる前から、仕事や就職活動で東京へ来なくてはならない方なども利用してくれ、なんとか運営を続けることがきたんです」と、震災後を振り返った。

知見を拡大する旅の良さ

ゲストハウスに対する国内利用客の価値観は刻々と変化し、近年はゲストハウスへ宿泊することを旅の目的とする人も増えている。こうした中、BJが運営する店舗はそれぞれが違う色を持ち、それぞれの場所での過ごし方や楽しみ方を提供している。

「悩みや苦しみを感じる時もあるんですけど、立ち直れないほどに打ちひしがれることはないですね。ネガティブなことを考える時間が無いことも理由にありますが、訪れる苦労を想像するより、『良いものができればなんとかなる』という考えが先にありますね。規模が大きくなっても、そこに変化はなくって、やりたいと思うことに全力で向かうだけだと思っています」

境界を越えて人が集う場所

これまで数万人のゲストを迎えてきたBJ。桐村さんは、提供者であり、利用者でもありたいという想いから、今でも国内、海外へと足を運ぶ。「旅は新しい価値観との出会い。そして、自分自身も見つめ直す場所です。ただ、必ずしも楽しいことだけではない。思いがけず嫌な経験をすることもあるかもしれないし、寂しさや不安を感じることもあります。それでも、旅は結果として知見の拡大に繋がるし、自分自身のためになると信じています」

今年の3月には、BJが運営を手掛けるカフェ、バーを併設したホステルCITANがオープンしたばかりだが、立地や内装などの風合いは、これまでの3店舗を踏襲しつつも、また新たなスタートを切ったように感じた。しかし、BJ掲げた理念と、桐村さんの信念に変化はない。

「BJでは、『あらゆる境界線を越えて、人々が集える場所を』という理念を掲げていますが、時々、この理念そのものの状況を自分たちの宿で実感する瞬間があるんです。色々な人が集って、そこに交流が生まれる。さらに美味しいお酒があって、いい音楽も流れている。そういう場所が提供できることは嬉しいことで、経営者としても個人としても、この想いを叶え続けるために、日々を積み重ねていきたいですね」

MODEL


ブーツを履いている感覚とは違って、ポップな感じでいられるのがいいですね。

PAMPA PUDDLE LITE WP BLACK/METAL (3085)
PRICE:¥14,904(tax incl.)

PROFILE


1985年、大分出身。大学卒業後は飲食コンサルタント会社に勤務。24才の時に「新しい価値観に触れるきっかけをつくりたい。日本をもっと旅しやすくしたい」という想いの元に集まったメンバー4人と、株式会社Backpackers' Japanを創業。2010年に1号店のtoco.を開業。現在は東京にtoco.、Nui.、CITANの3店舗と、京都のLenを合わせた4店舗を運営している。

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INFORMATION


toco.
〒111-0007 東京都台東区下谷2-13-21
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Nui. HOSTEL & BAR LOUNGE
〒111-0051 東京都台東区蔵前2-14-13
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Len -Guesthouse, Cafe, Bar, Dining in Kyoto.
〒600-8018 京都市下京区河原町通り松原下ル植松町709-3
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CITAN | Hostel, Cafe, Bar, Dining
〒103-0027 東京都中央区日本橋大伝馬町15-2
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