MY EXPLORATION vol.06 The Wisely Brothers

3人でおしゃべりをしているように

パラディウムがテーマにする"CITY EXPLORATION"(都市探検)インタビュー第六回目は、今年2月にメジャーデビューし、初となるフルアルバム『YAK』をリリースした3ピースバンドThe Wisely Brothers。

それぞれの音楽との出会いから、3人での音楽へ

真舘晴子(Gt. Vo. / まだちはるこ。以下、真舘)、和久利泉(Ba. Cho. わくりいずみ。以下、和久利)、渡辺朱音(Dr. Cho. わたなべあかね。以下、渡辺)の3人が高校の軽音部で結成したThe Wisely Brothers(以下、ワイズリーブラザーズ)は、2014年に都内のライブハウスを中心に本格的な活動を開始すると、同年に『ファミリー・ミニアルバム』をリリース。2016年にリリースした『シーサイド81』は、タワレコメンやApple Musicの今週のNEW ARTISTへ選出され、幅広いリスナーたちから注目を集めた。そして、2018年2月。初のフルアルバムであり、メジャ―デビューアルバムとなる『YAK(ヤック)』をリリースした。

真舘は、音楽好きの父を持ち、家ではスティーヴィー・ワンダーやカエターノ・ヴェローゾなどの音楽が流れていた。「当時は、音楽を生活の中にある風景のひとつとして感じていました」生活にある音楽は、楽器に触れるきっかにもなった。「小学生の時に、日本のお祭りで篠笛を吹いて、それからマリンバなど色々な楽器に触れて、中学で吹奏楽部に入りました」と語る。

渡辺は、姉が習っていたピアノ教室がはじまりだった。「小学校卒業まで4年通ったピアノ教室では、自由に作曲をする時間がありました。その時に作った曲は覚えていないですけど、好きで音楽をしていたことを覚えていますね」

和久利は小学校入学前に東京へ引っ越してきたが、自宅の近所にあった児童センターでベースと出会う。「児童センターに音楽好きのおじさんがいたんですけど、『運動だけじゃなくて、音楽もして欲しい』って、簡易的なスタジオを作ってくれて、そこでベースをはじめました。当時は遊びの延長でしたが、中学でバンドをはじめた時期から、自分がどんな音楽が好きなのかが知りたくなって、つしまみれやフラワーカンパニーズ…とにかく気になったアーティストの音楽を色々と聴き始めました。その頃から楽器を演奏するのが楽しくなりましたね」

3人は高校でクラスメートとして出会い、真舘がきっかけとなり、軽音楽部でワイズリーブラザーズが結成された。

「バンドをやったことがないから、入学したら軽音楽部に入ることを決めていました。だけど、入部してから”誰と組んでいいのか”悩んでいて…。そんなときに、入学時の自己紹介で、泉(和久利)が『中学ではバンドをしていたけど、運動部に入ろうと思っています』、朱音(渡辺)は『吹奏楽部でパーカッションをしていたけど、部活には入らない予定です』と話していたのを思い出したので、ふたりがどういう音楽が好きか何も知らないまま、声をかけたんです(笑)」

私は今君のことを考えているけど 君は今何を考えているの

3人で音を出す楽しさは日常となり、進路はバラバラになったが、高校卒業後も彼女たちはバンドを続けた。2014年に初めてCDをリリースし、ツアーへとまわるなど、傍目には順調に感じられるバンドの歩みだが、高校時代のようには時間が取れなくなった3人は、言葉には出せないもどかしさを募らせていた。

2015年のクリスマスに、彼女たちは初めてバンドの存在について話し合う機会を持った。「バンドの時間を作るのが難しくなってきて、「バンドをすることってこんな大変だったかな?」って感じたんです。それでも辞めるつもりもない。どうやったら大切にできるだろう。って」と真舘は振り返る。

「それぞれ進学して、違う場所にいるけどバンドは続けていて、CDの流通もしている。さらに、ツアーまでまわっているのに、この"バンド"という存在をどうするのかについての話は、したことがない。それでも誰もやめようとは思わないし、口にも出さなかったんです。誰からも言葉に出せなかった時間はすごく長かったけど、言葉に出し合えたときに、『ごめんなさい』、それと『ありがとう』って」と渡辺が話す。

和久利が、「何も決めなくてもバンドはできていたから、気付かないふりをしていた部分もあると思うんです。だけど、これからも”3人の音楽を、3人が楽しむため”に、話しをしなくちゃいけない時期だったんだと思います」と続けた。

この話を聞いた時に、男子へとの接し方に戸惑うことを連想させる楽曲だが、『サウザンド・ビネガー』、”君は今私の前にいて 私は今君の前にいる 当たり前だと君は言ったけど 果たして本当にそうだろうか 私は今君のことを考えているけど 君は今何を考えているの そんなこと目の前では聞ける訳ないよ” と、歌詞の一節を思い起した。

3人でおしゃべりをしているように

メジャーデビューをし、初のフルアルバムでもある『YAK(ヤック)』というタイトルには、"おしゃべり"、"無駄話"という意味(-スラング)が含まれている。アルバム名の由来について、真舘はこう話す。

「昨年頃にライブへ来てくれたお客さんが、『ワイズリーブラザーズのライブは会話をしているように感じるね』と言ってくれたことがあったんですけど、それがとても嬉しかったことや、今回のアルバムを作っている間にも、私たちが、『突然に話して、笑ってみたりしたり、突然に黙ってみたり。そんな雰囲気や空気感そのものが、私たちの音楽と一緒だね』と言ってもらったことがありました。そういったことがあって、”これまで私たちが過ごしてきた関係性が、そのまま音楽になっている”。そんなことに気付いたんです」

「私たちは、3人の気持ちや雰囲気とかけ離れた音楽をやっているわけではなくて、私たちのありのままが音楽になっているんです。その音楽をできることが、一番楽しい気持ちになれるんです。高校の時から、一緒にご飯を食べたり、休み時間や帰り道には、音楽と全然関係のない話をしたりもしてきた友達だけど、それとは別の感覚で、バンドも一緒にやってきました。色々なことを一緒に感じて、両方の時間を共有してきました。バンドとして成り立っていない時代から、色々な経験を共にしたことが、"The Wisely Brothers"を作ってきていたんです。この3人だからこそ、3人らしい音楽をやっていけばいいんだなって」

「『YAK』では、今の私たちが見ている日常の楽しいことや面白いもの。道端でふと、ここ変だなって思った不思議なこと。そんなことを私たちの音に込めました。聴いてくれた誰かが楽しんでくれたり、日常の新しい発見になったり、誰かの新しい気持ちになってくれたら嬉しいです。それは3人とも変わらない想いです」

3人ではじめたものが面白くて、今もこの3人で音を鳴らしている

高校の軽音部からはじまった3人の日常。多少の変化があったとしても、”3人が楽しめることを、3人で楽しんでする”ことへ変わりはない。

「売れるためにバンドをしたい。音楽を発表していきたいという意識はなかったんです。ステージに立ち始めた頃は、『なんで今、ステージに立っているのかな?』みたいな感覚でした」と和久利が笑うと、渡辺は、「普段は前に出るのは好きな方なんですけど、音楽は前のめりで、聴いてもらいたい! という感じではないんです。とにかく、3人ではじめたものが面白くて、今もこの3人で音を鳴らしているのが楽しい。そういう気持ちが強いですね」と話す。

真舘も、「私もその気持ちがずっと長く続いています。軽音部でバンドをはじめて、仲の良くなった3人で演奏する。そのことが楽しくて、気付いたら日常になっていました。日常だから楽しいだけじゃなくて、悲しいことや辛いこともたくさんあって。その中で、悩んでみたり、頑張らなくちゃって、色々なことを試してみる。当たり前すぎて意識をしていなかった、小さな積み重ねたちが、今の私たちの音楽になっているのかなと思います」と続ける。

今後のワイズリーブラザーズについて尋ねると、「私たちは普通に生活をして、音楽を楽しんでいる人たちと一緒だと思うんです。私たちは、私たちの日常を楽しんで、それを音楽にしているだけです。これまでも私たち、これからも私たちです。まず、自分たちが楽しむこと。そんな私たちの音楽で、聴いてくれた人の日常が楽しくなってくれたら嬉しいですね」と渡辺が話し、2人を見た。そして、3人は顔を見合わせて屈強のない笑顔で“おしゃべり”をはじめた。

MODEL


真舘晴子 / PAMPA HI ORIGINALE SD SAFARI/RAINY DAY

洋服はその時々の気持ちで選んでみる。楽しめる部分ですよね。ファッションも日常と一緒だなと思います。このコーデは、シューズを薄紫色のソックスと合わせてみました。全体的には、レディピンクとベージュ。その間にある薄紫。パステルだけど、ファンシーな感じにはしない。同系色だけどちょっと違う。見たことのないような、面白い色の組み合わせが好きです。

渡辺朱音 / PAMPA PUDDLE LITE WP MINERAL GR

赤のチェスターを着るか悩んだんですけど、赤という主張の強い色を選んだ代わりに、アクセサリーはつけない。シュータンとかアウトソールのロゴに水色が使われているのが好きで、ちょっと薄めのデニムだと足元が可愛く見えるかな。と思ったら、絶対にこのデニムだ!と思ってこのスタイルにしました。

和久利泉 / PAMPA HI ORGINALE BLACK/BLACK

普段はラフなスタイルが多いですね。色は、好きな音楽、楽しいものを選ぶような感覚で選んだりします。今日は、黒だとなんでも合わせやすいです。PAMPA Hi ORIGINALEはキャンバスだけど、しっかりとブーツの形をしているので、黒のブーツにラフなスタイルを選ぶと、ちょっと男の子っぽくなりすぎちゃうかなぁ。と思ったので、「じゃあ、今日はブラウス!」 そんな感じで合わせてみました。

PHOTOGRAPH by ARISA ITO

PROFILE


The Wisely Brothers(ワイズリーブラザーズ)

真舘晴子 (Gt. /Vo.)、和久利泉 (Ba./Cho)、渡辺朱音(Dr./Cho)

都内世田谷総合高校の軽音楽部にて結成。名付け親は真舘の父である真舘嘉浩(Manhattan Records、music.jpロゴ、夏の庭、装丁するデザイナー)。2014 下北沢のライブハウスを中心に活動開始。2016 年7月「シーサイド81」リリース。2016年7月タワレコメン、Apple Music「今週のNEW ARTIST」選出。2017年1月7inchアナログ「メイプルカナダ」リリース。『装苑』5月号 未来をつくるUNDERGROUNDER掲載。スペースシャワーTV「NEW FORCE」選出。2017年11月7inchアナログ「The Letter」リリース。同月にShibuya WWWにてワンマンライブ開催。

OFFICIAL INSTAGRAM TWITTER FACEBOOK

INFORMATION


■RELEASE

TITLE:1st Full Album「YAK」
ARTIST:The Wisely brothers
DATE:2018/02/21
MORE INFO

■EVENT
1st Full Album「YAK」Release Tour『YAK YAK TOUR』 ワンマンツアー

大阪
DAY:2018.03.31(SAT)
OPEN / START:18:00 / 18:30
PLACE:Live House Pangea

名古屋
DAY:2018.04.01(SUN)
OPEN / START:17:30 / 18:00
PLACE:K.Dハポン SOLD OUT!

東京
DAY:2018.04.07(SAT)
OPEN / START:18:00 / 18:30
PLACE:Shibuya WWW X

EVENT MORE INFO