MY EXPLORATION vol.11 にしのえみ

パラディウムが掲げるテーマ"CITY EXPLORATION(都市探検)"。PALLADIUM MAGAZINEにて、現代都市探検家の姿を追いかけるMY EXPLORATION。第十一回目は、VACATION 2018にも登場した、キーボディストのにしのえみ。

VACATION 2018のOtherCutも文末 Gallery 2 に掲載。

キーボディストのにしのえみさん(以下、にしの)は、ビッケブランカや鈴木愛理 (ex.℃-ute、Buono!)など、様々なアーティストのサポートミュージシャンとしてライブやフェス、テレビやラジオなどへの出演、レコーディングでの演奏を中心に、作詞・作曲、アレンジャーとしても活動を行っている。

各活動にて高い評価を受け、近頃は個人としてフィーチャーされることが増えているが、日々、自身への向上を課して、活動と表現のレンジを広げている。

個人の湧き出る音楽への快楽と
表現方法を突きつめる

にしのさんの音楽への目覚めは早く、音楽大学付属の幼稚園への入学を期に本格的な勉強をスタートさせた。そのまま一貫校で大学へ進学。文字通り、物心つく頃から音楽と触れ合ってきたが、当初は自身の演奏や作品の発表は、誰かに届けるというよりも自分が納得する音楽をただひたすら追求するためだけのものであった。

「2歳の時に祖母のアップライトピアノが家にあり、よく触って遊んでいました。その頃は歌うことも好きで家ではずっとおもちゃのマイクを持って歌っていたそうです。幼稚園は音楽大学の付属幼稚園へと入園しました。その時にグランドピアノを買ってもらい、本格的にクラシックピアノの勉強を始めました」

「幼少期から音楽が生活の中心で、学校の教室にもピアノが1台ずつ置いてありました。今思えばとんでもないスパルタ教育時代の渦中です。人前で演奏することは日常の出来事のひとつで、学校での休み時間は自分の演奏や作品を発表し合って、作曲をしたらみんなに披露をしていました。評判がいいとリトミック(*幼少音楽教育のひとつ。音楽を通じた舞台や体操などに使用される)の演目に使ってもらうこともありました。特に意識をすることもなく、人前で表現をするということが当たり前の環境でしたね」

「人前に立って何かを発表することは、発表していながらもプライベートの延長という感覚でした。とにかくひとりで部屋にこもり研究をして、個人的な快楽から湧き出てくる表現方法をつきつめては、明確な答えにして自身へと提示をする。そして、そのままステージへと持っていく。演奏をしていても自分のことしか考えていないというか(笑)。誰かが見ていて、受け取られているかは自分には関係なくて、それを良しとしてくれた人がいたら、”それはそれで良かったかな”くらいにしか思っていませんでした。そんな調子なので、学生の頃は受け手のことを意識したことはありませんでした」

「受け手の存在を意識するようになったのは、音楽活動を本格的に始めて、ポップスを演奏し始めた、2014年頃だったでしょうか。それからは、これまでとは違ったライブでの熱量を肌で感じました。ライブの感想をいただくことや、音源を聴いたけどライブには来ることができなかった方たちからも、メッセージをいただくようになりました。SNSが発達して、みんなの”声”を聞く機会が増えたことで、発信する身として、表現者として、『より、多角的な手法や目線で発信しよう!』と意識の変化がありました」

リスタート ― 私がしたいこと

音大付属の幼稚園から大学へ進学。中学時代にはNHK合唱コンクールにて全国1位の受賞を経験し、高校時代はクラスメイトに誘われてバンドのボーカルを務めるなど、音楽に触れる機会は増えていき、大学卒業直前までの長い時間を音楽と過ごした。しかし、幼少期から突き詰めてきたものへと真摯に向き合う姿勢から、卒業後には一度音楽から離れることを選んだ。

「大学卒業を控えて、音楽との関係を考えることが増えました。私は『音楽をする資格がないのでは』、『人前に立つべき人間ではないのでは』そういう気持ちが生まれては日を増すごとに膨らんでいき、この状態のままでステージへ立てば、『お客さんや関わってくださっている方にとても失礼だ』と。この気持ちは覆ることはなく、卒業3ヶ月前から就職活動を始め、教育機関へと就職して、もう2度と音楽はやらないと決めました。教師としての生活が始まり、子どもたちと過ごす時間が楽しくて、『教師が私にとっての天職なんだ!』そう思って働いていました」

2011年、大学卒業後から離れていた音楽が「自分が本当にやりたいこと」と、知る出来事が起きた。天職だと思っていた教育現場から離れることを決心し、数年後に退職。本格的に音楽の表現者として活動を始める。

「先生になり気付けば数年が経ち、平穏だと感じていた日々の中で、2011年に東日本大震災が起きました。その時、職員室にいた私の方に棚が倒れてきたんです。このまま死んでしまうのでは。そう感じた瞬間に”人生でやりたかったこと”が、私の中を駆け巡りました。『ステージに立ちたい。歌っている人のバックで演奏する。音楽で食べていきたい』。先生としての平穏な日々の中で自分でも想像をしていなかった、音楽に紐づくことたちが真っ先に出てきました。『そう、私はずっと音楽をやりたかったんだ』。自分の本当の想いへと気づいて愕然としました」

「このことを期として退職届を出し、数年後に教職から離れました。それから、『よし!音楽活動を始めよう!』と、意気込んでいたのですが、最初は音楽関係の知り合いもいなければ、活動をするための機材ひとつも持っていない。何より仕事の取り方がわからない。それでも本当にしたいことへの気持ちだけはしっかりと持ち、謎の自信だけを頼りに色々な場所へと飲みに行っては『私はこんなことがしたい!』と話しているだけでしたが、そこから沢山の出会いと素晴らしいご縁に恵まれて、現在の音楽活動へと紐づいていきました。今は、私が本当にやりたかった音楽の仕事をさせていただけている日々に感謝をしていますし、とても幸せを感じています」

呼吸、間、感覚、精神、発言、行動。
すべてが音楽へと繋がっている

現在はサポートミュージシャンとして全国各地の音楽フェスから、武道館やアリーナといった大舞台へ立ち、レコーディングにも参加しているにしのさんだが、一度離れた音楽と、現在はどのように向き合っているのだろうか。

「音楽はいつでも、私と共にいてくれる存在です。一度は私から裏切ってしまいましたが、音楽は私を絶対に裏切りませんでした。これからは死ぬまでずっと一緒にいたいです。呼吸、間、感覚、精神、発言、行動。大失恋も誕生日パーティーさえもひとつひとつが、音楽へと還元されます。感じられるすべてへ、『この感じを人に伝えるにはどうしたらいいのだろう』と考え続けています。こう言うとすごく堅苦しい感じがしますけど、無駄な時間もすごく好きで、そういうこともひっくるめて大切にしています(笑)」

「キーボードは、その還元したものを音楽で表現するためのツールのひとつであり、レンジも広くて表情も多彩なので、いつも私のやりたいことへと乗ってきてくれる一番仲がよい楽器であり、相棒ですね」

私らしく。今やるべきことをやるだけ

「現在はウェブを通じて、いつでも情報を共有できますし、お客さんとの距離も近くなりました。特にSNSを中心に、たくさんのメッセージをいただきますが、『音楽を聴いて元気になった』とか、『明日も頑張ります!』。そんなメッセージをいただいた時は、私自身も力をもらえますし、大きな喜びを感じます。その対にある辛さ苦悩。誰しもが日々の中で、大なり小なりあると思いますが、私はあまり苦悩を苦痛だと感じません」

「私らしくいること。たまに分からなくなることもありますけど、それも私。良い意味で子供の頃と変わらず、それでも日々しっかり変化をして、今やるべきことを順番に自分のペースで突き進むだけです。喜ばしいことに、ライブをさせていただける場所や規模も広がってきています。来年は日本の活動と同時に、海外での活動、海外のミュージシャンとも一緒にやれたらいいなと考えています。環境に変化があっても、どんなことが起きても、どんな場所にいても、私は私自身がホームなので、目の前に広がる環境に感謝しながら、心強い仲間と共に、たくさんの経験をしていきたいです」

Photo by Mayumi Komoto

PROFILE


東京都出身。2歳よりピアノを始める。国立音楽大学付属幼稚園入園と同時に本格的にクラシック音楽の勉強を開始。一貫校で国立音楽大学鍵盤学科卒業までクラシックピアノを専攻。大学卒業後、教師として音楽とかけ離れた生活を送るものの、改めて音楽と生活を共に生きていきたいと志を固め、2014年春からサポートミュージシャンとして演奏活動を開始。現在はアコースティックからバンドサウンドまで、コーラスも精力的に取り入れながら、歌物からインストとジャンル問わず、ビッケブランカ、鈴木愛理 (ex.℃-ute、Buono!)をはじめ、様々なアーティストのサポート活動を行っている。

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