URBAN EXPLORATION <下北沢にて'17>会場の下北沢を探索

12月2日(土)下北沢を舞台に開催されるサーキットフェス<下北沢にて’17>の主催者であり、開催会場のひとつでもある「近松」の代表、そしてTHEラブ人間のキーボードでもある森澤常行さんと、ボーカルの金田康平さんと一緒に、下北沢を探索しながらイベントの魅力や”下北文化”について伺いました。

はじまりは格好いいバンドを集めること

<下北沢にて>は、下北沢の街を楽しむことができるサーキット型の音楽フェス。8回目となる今年は、14会場でライブを含めた120近くのパフォーマンスが予定されている。2010年にスタートした<下北沢にて>だが、開催のきっかけはとてもシンプルだった。

今春、ファンに惜しまれながら閉店したライブハウス下北沢CAVE-BE(ケイヴビー)で、THEラブ人間の森澤さんと金田さんは、10代の頃働いていた。職場では先輩と後輩だったが、タイムカードを切れば、ふたりは音楽について語り合う友人だった。ある時、金田さんが、「440(下北沢のライブハウス)の前を歩行者天国にして、すごくデカいやぐらを組んで、そこにステージを作って音楽がなっている。そんなイベントをやりたい!」と話したことが最初のイメージだったという。

ふたりは2009年にTHE ラブ人間を結成。<下北沢にて>をツアーのファイナルイベントとして開催することを決めた。今では街から後援されるイベントになったが、あくまでもバンドを結成してから出会った、自分たちが本当に格好いいと思うバンドを集めた自主企画が<下北沢にて>だった。「売れているからブッキングしているわけではない。そのスタンスは今も変わらない」とふたりは口をそろえた。

「近松」を下北文化の発信地に

<下北沢にて>開催会場のひとつである「近松」は、今年6月にCAVE-BE跡地にオープン。森澤さんが代表を務めるイベントスペースである。近松のある地下へと階段を下る時はいかにもライブハウスへ行く様だが、エントランスの印象は明るく、フロアはヨーロッパの小さな映画館のようだ。

「近松は”ライブハウス”という表現はしていないんです。”ライブハウス”ってコアな音楽好きが集まる場所で、おそらく一般のひとは気軽には遊びに行けないイメージがあると思うんです。近松は音楽がメインですけど、芸人さんのライブや映画も上映しています。どんなひとでも気軽に遊びに来ることができる環境を作りたいと思って、フロアを広く感じてもらえるように壁の塗り替えをしたり、バーカウンターをフロアの外に作ったりしました。近松は気軽に足を運んでもらって、”下北文化”を感じてもらえる、発信地にしたいですね」と森澤さんは話してくれた。

すべて自分で決められる自由さ

今年は野外ステージが一部移転、北口改札前には野外ステージ”スクエア”が設置される。金田さんは今回の見どころのひとつとしてこの場所への想いを話してくれた。「ライブハウスでいくら唄っても80才のおじいちゃんには聴いてもらえない。だけど、ここにステージができたら聴いてもらえますよね。ライブハウスで100回やっても聴かせることのできない人が、スクエアには沢山います」。イベント当日は、商店街を練り歩くパレードに、その場に集ったひとたちとテーマソングを作りあげていくステージ企画やクイズ大会など、偶然下北沢へ足を運んだひとでも気軽に参加できる催しがそろっている。

会場と協力店舗が掲載されたマップも用意されており、小腹をどこで満たすのかも目星をつけられる。「サーキットイベントが他のイベントと違うのは、自分でタイムテーブルを選べるところ。こんなに自由なものはないかなと思います」と森澤さん。地元の人が集う憩いのスペースで、ぼーっとするのも良い。気になっていた店にふらっと立ち寄って、町歩きしてみるのも<下北沢にて>の楽しみ方かもしれない。

とはいえ、音楽が軸のイベント。醍醐味はライブハウスにあると金田さんは熱をこめる。「好きな音楽をセレクトしたカセットテープを人に渡すときにある欲望の根源は、『みんなが知らない音楽をこれだけ知っていて、俺が教えてやる!』っていう、そんな感じですよね。チケットを買って遊びに来てくれた人には、カセットテープを渡すように、ライブという体験で渡したいなって。実際に聴いてもらうのが一番伝わる。サーキットイベントは動画サイトを巡る感覚に近いかもしれない。だけど、せっかく来てくれるなら、見たいバンドが演奏してない時間には、聴いたことのないバンドの演奏を生で見てほしいですね」

この街にとって当たり前のお祭りに

下北沢を歩いてみると、都心とは思えないゆっくりとした時間が流れている。新しいものと古いものが溶けるように混在し、訪れるひとたち受け入れようとしているオープンな空気感。街と人の距離が近く、血が通った感触がある。人通りの多い商店街の真ん中で立ち止まっても、迷惑そうにするひとはいない。自然なテンポをたもっていられるから、街に取り残された感じがない。今回、「地元の人でも<下北沢にて>というイベントを知らない人もいる」という話もあったのだが、逆にとらえれば、『<下北沢にて>は地元の生活の一部に溶け込んでいる』とも考えられるのではないだろうか。

森澤さんは近松という場所を持ち、意識の変化があったという。「8年目にして、ようやく街と一緒にやらせていただいていることを意識して作れていると感じますね。商店街の組合へ行く回数や、街のお祭りやイベントにスタッフとして参加することも以前より増えました。地元での交流を通じて関係を築く。お店を構えて関係はより深くなり、街も人間関係でできているんだと思います。<下北沢にて>は、音楽好きだけが集まるイベントではなく、地元の子どもたちや大人に応援されて、この街の年間行事にできたら一番良いですね」と笑顔で話してくれた。

<下北沢にて>の舞台、下北沢を探索


街中にある駐車場、地元の人の憩いの場、小学生が描いた絵が並ぶ商店街。そして、この街に点在するライブハウス。イベントはごく日常的な風景の中で繰り広げられる。

駐車場タローパーキング。 当日はここが<下北沢にて>の運営本部になる。

会場のひとつであるGARDEN(ガーデン)の前を通り、高架下まで歩く。開催1週間前ということで街中には<下北沢にて>のフラッグが沢山。

休憩ポイントとして下北沢ケージで一息。この場所ではイベント当日にタイの新しいビール”U BEER(ユービア)”が販売予定。

イベント協力店舗の”まぽねん”へ突発的に立ち寄ってみたものの開店前。牛すじ素麺が美味しいとか。

昨年に続き、下北沢一番街に野外ステージ”アイパーク”が設置される。昨年の様子とくらべると当日の様子が想像できない。

北口改札前のしもきたスクエア。今年は初めてこちらでステージが設置され、音楽ライブのみならずクイズ大会なども行われる。

現在都市開発中の下北沢。下町の雰囲気を残しながらも最近は海外の人にも人気エリア。いたるところにポスターが貼ってある。

下北沢南口商店街入り口は下北沢の待ち合わせスポットのひとつ。商店街では、さまざまな形態のお店が軒を連ねる。

下北沢名物ニックンロールで肉巻きを購入。丸一日、開催されるイベントなので腹ごしらえも大切。ご飯も楽しみたい。

INTERVIEW & TEXT by Erina Wataya 

MODEL


森澤常行
PAMPA HI ORIGINALE(INDIGO/BLACK)
ブーツを履くと、いつも履いたり脱いだりが大変だなって思うんだけど、そういう感覚もないし、ソールが柔らかくて歩きやすくて疲れない。今日のコーデは、足元がINDIGO/BLACKなので、インナーは明るめ。ブーツを見せたいのでロールアップができるデニムをセレクト。

金田康平
PALLABOSSE LOW(Black/Black)
皮素材で心配なのは靴ずれ。このPALLABOSSE LOWは卸したてだけど、今日下北沢を歩いても靴ずれがなかったし、ソールのクッション性も高いくて、歩いていて柔らかい感じ。日本人の足で街歩きには合っている。今日のコーデは…いつもと変わらない普段通りがテーマ。

PROFILE


2009年1月、東京世田谷下北沢にて結成された恋愛至上主義音楽集団。あらゆる街でありえない演奏をしながら、ありえないレコードを録音し発表し続けている。
2010年9月にはライブハウス多会場往来自由パーティー『下北沢にて』をオーガナイズし始め、現在までに規模を拡大しながら、毎年時期を問わず開催されている。

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INFORMATION


下北沢にて’17
DAY:2017.12.02(SAT)
PLACE:GARDEN / club 251 / BASEMENT BAR / THREE / 近松 / ERA / GARAGE / Daisy Bar / Laguna / SHELTER / MOSAiC / 440 / しもきたスクエア (野外ステージ) / 下北沢アイパーク (野外ステージ) / 無料ステージ他
ARTIST:約110組
TICKET:¥4,000+1DRINK(¥600)
詳細:下北沢にて‛17 オフィシャルサイト

新感覚ライブハウス 近松 (チカマツ)
PLACE:〒155-0031 東京都世田谷区北沢2-14-16
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